対数・冪・指数関数の極限の強さを積分で考える
以下、\( a \) を正の実数、\( b \) を1より大きい実数とします。
皆さんは、対数関数 \( x\mapsto \log_{b}{x} \)、冪関数 \( x\mapsto {x}^a\)、指数関数 \( x\mapsto {b}^x\) の極限の強さを知っていますか?まず、これらは \( x\to\infty \) でいずれも正の無限大に発散することは知っているでしょう。しかし、その発散速度 ( \( x\to\infty \) としたときの数値の増える度合い) はいずれも異なります。すなわち、次が成り立ちます。
ちょうど冒頭で並べた順に、発散速度は大きくなります。今回は、この極限式を積分を用いて (高校数学の範囲で) 示そうと思います。
なお、\( x\to\infty \) を考えるので、\( x \) は十分大きい正の数とします。
まず、対数関数と冪関数ですが、次の不等式評価より挟み撃ちの原理から示されます。
ただし、\( t\ge1 \) で \( \dfrac{1}{t}\le\dfrac{1}{t^{1-\frac{a}{2}}}\) であることを用いました。
この証明のポイントは、対数関数を積分を用いて表し、被積分関数を評価して冪関数のみの評価式に持ち込むことです。
次に、冪関数と指数関数ですが
より \( \dfrac{x}{{b}^{\frac{x}{a}}} \) について考えてやればよく、上と同じ方針で、次のようになります。
ただし、\( t\ge0,\ b>1 \) で \( 1\le {\left(\dfrac{b+1}{2}\right)}^t \) であること、及び \( 2-\dfrac{2}{b+1}>1 \) であることを用いました。
この証明のポイントは、冪関数 (一次関数) を積分を用いて表し、被積分関数を評価して指数関数のみの評価式に持ち込むことです。対数関数と冪関数を比べたときと、基本的な考え方は一緒となります。
いかがでしたでしょうか。もしとっさに上の極限を問われたとき、この積分を用いた方法なら直ぐに示すことができます (特に \( a,b \) が具体的な値で与えられてる場合 )。
積分は、不等式や極限の証明をエレガントにやろうと思ったときに役立つことが多いです (一応その訳はありますが、面倒なのでここでは解説しません)。今回の極限の証明もその一端として理解していただけると幸いです。
複素係数二次方程式の解の公式
実係数二次方程式
の解は、中学校(高校?)で「解の公式」として習うように
で与えられますが、では \( a,b,c \) が実数ではなく複素数の場合、解の公式はどのようになるでしょうか。すなわち、次の問題を考えます。
複素係数二次方程式
の解の公式を与えよ。
早速考えてみましょう。基本的に、実係数のときと同じ流れで求めます。すなわち、まず平方完成をします。
\( \alpha\neq 0 \) より
ここで
とおくと、次の簡単な二次方程式に帰着します。
さて、\( \delta \) に関して以下のように場合分けして考えます。
(1) \( \delta\in\mathbb{R} \) のとき
このとき、右辺をそのまま平方根をとることが出来て、\( \delta\ge0 \) なら
となり、\( \delta<0 \) なら
となります。
(2) \( \delta\in\mathbb{C}\setminus\mathbb{R} \) のとき
\( \delta \) の平方根をすぐに求めることはできないので、\( w=p+iq\quad(p,q\in\mathbb{R}) \) とおいて
を満たす \( p,q \) を \( \delta \) を用いて表すことを考えます。実部と虚部を見比べれば
となりますが、一つ目の式の両辺に \( 4{p}^2 \) をかけ、二つ目の式を用いることによって
を得ます。これを\( {p}^2 \) の二次方程式とみて、実係数二次方程式の解の公式を用いると
と計算できます。ここで、\( \delta\in\mathbb{C}\setminus\mathbb{R} \) より \( \mathrm{Re}(\delta)<|\delta| \) で、\( {p}^2\ge0 \) なので
となり
が従います。また
であることを用いれば
が導かれます。よって
となります。また、この式は \( \delta\in\mathbb{R} \) としても成り立つことが確認できます。
以上から、複素係数二次方程式の解は
で与えられることが分かります。
当たり前ですが、これは実係数二次方程式の解の公式の一般化になってます。この式はもうちょっと変形できるかもしれませんが、個人的にはこの形が気に入っているので、当記事ではこのままにしておきます。